口腔外科領域には歯原性腫瘍、歯原性嚢胞など歯原性疾患がみられ、その発生由来、発生時期などの詳細については、現在、解明されていない部分が多い。そのため、著者らは各発生段階の家兎歯胚について各種サイトケラチンの局在の検討を行った。まず、基礎的検討として成獣家兎を用いて各種サイトケラチン抗体(一次抗体)の最適希釈倍率を検討した。免疫染色はABC法によった。1)抗ヒトサイトケラチン8 (DAKO M631)、2)抗ヒトサイトケラチン10 (DAKO M7002)、3)抗ヒトサイトケラチン19 (DAKO M888)、4)抗ヒトサイトケラチン20 (DAKO M7019)について検討したところ、1)50-100倍、2)50倍、4)40-80倍で良く染色でき、3)は25-100倍でも良好な結果は得られなかった。以上からこれら1、2、4)を実験に用い、それぞれ上記の各倍率で用いることとした。次に本実験としてまず、交尾日から計算して胎齢20、25、30日と考えられる家兎標本を用いた。標本数はそれぞれ27、11、18羽であった。これらを10%ホルマリンにより2日間固定したのち、切り出し、通法の如くパラフィンに包埋し、パラフィン・ブロックを作製、3μmで薄切りし、免疫染色を行い、検鏡に付した。結果:サイトケラチン8;胎齢20日、口腔粘膜、歯堤、内、外エナメル上皮、象牙芽細胞は全て陽性。胎齢25日、口腔粘膜、内エナメル上皮、象牙芽細胞は全て陽性。胎齢30日、口腔粘膜のみ、陽性。サイトケラチン10;各発育段階で口腔粘膜のみ、陽性。サイトケラチン19;各発育段階で全ての組織が陰性。サイトケラチン20;胎齢30日でのみ口腔粘膜が陽性。以上から歯胚の発育に伴い、各種サイトケラチンの局在に変化がみられ、各種歯原性疾患の発生時期の検討に使える可能性が示唆された。
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