研究概要 |
最近の研究により、adenomatous polyposis gene (APC遺伝子)の異常は家族性大腸ポリ-プ症ばかりでなく、消化器系の様々な癌においても認められることが判明してきた。口腔扁平上皮癌発癌過程にAPC遺伝子が関与しているかどうかを検討するため、24人の日本人口腔悪性腫瘍患者から腫瘍組織と正常組織を採取し、そのDNAを用いてpolymerase chain reaction (PCR・SSCP)法とsequence法で検索した。 24症例の口腔扁平上皮癌患者のうち3例でそのDNA配列に合わせて5箇所の異常があった(12.5%)。また、そのうちの3つの部位でAPC遺伝子産物のアミノ酸配列に変化を伴っていた。 さらに、APC遺伝子のexon11におけるLOH (loss of heterozygosity)も検索した。本法において、24サンプルの内の45.8%が"informative"であり、その内の72.7%にLOHが検出された。この口腔扁平上皮癌におけるLOHの割合は先に報告された食道扁平上皮癌におけるその割合に近似していた。 これらの結果から、口腔扁平上皮の癌化においてもAPC遺伝子異常が関与していることが強く示唆された。 以上の研究結果は、論文としてまとめられ、International Journal of Cancer,58巻,p814-p817,1994に掲載された。
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