I.口腔扁平上皮癌細胞HSC-2ならびにHSC-4におけるTGF-β受容体の遺伝子構造の解析 我々はこれまでに、HSC-2ならびにHSC-4細胞におけるTGF-β受容体遺伝子の構造異常もしくは、シグナル伝達異常の可能性を示唆してきた。そこで以下の実験により、TGF-β受容体とシグナル伝達経路における癌化機構との関連を検討した。 1.HSC-2ならびにHSC-4細胞よりmRNAを抽出し、逆転写酵素によりcDNAを合成し、PCR法によりTβRI、TβRII遺伝子をcloningし塩基配列を決定した。我々はすでに正常繊維芽細胞からTGF-β受容体(TβRI、TβRII)をcloning済みであり、これらと比較したところ、すくなくとも受容体遺伝子の細胞外領域に関して構造異常を認めず、シグナル伝達異常が推測された。 2.これら受容体に関する抗体を用いて、TGF-β刺激時・非刺激時におけるin-vitro-kinase-assayをおこない、一次元ならびに二次元電気泳動にて解析し、標的リン酸化蛋白質の検索を行なった。 II.TGF-β受容体のStable transfectionによる機能解析 一般にTGF-βが作用するには、TβRI、TβRIIの2種類のTGF-β受容体がリガンドの刺激によりheterodimerを形成することが不可欠とされている。口腔扁平上皮癌細胞(HSC-2、HSC-4)では、TβRIIのタンパクレベルでの発現を認めない。そこで、次のようなStable transfectionを行ない細胞機能への影響を解析した。 1.TβRIIの発現が低くTGF-βに反応しない細胞(HSC-2)にTβRIIをtransfectionしたところDNA合性能に関してはTGF-βの反応を回復したものの、細胞外基質の産性能等は回復を認めなかった。 2.TβRIIのDNA(Dominant Negative Receptor-細胞内ドメインを持たない受容体-)をHSC-4細胞にtransfectionし、DNA合性能、細胞外基質の産性能等の機能におよぼすTGF-βの作用を現在比較検討している。
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