口腔癌のin vivo転移モデルを用いて、転移能の異なるヒト口腔扁平上皮癌細胞の産生するマトリックスメタロプロテナーゼ(MMPs)の種類、産生量、活性について生化学的に検索するとともに、癌組織におけるこれらMMPsの免疫組織化学的局在を検討した。その結果、 1.2種類の癌細胞(OSC-19細胞とOSC-20細胞)をヌードマウスの舌に移植したところ、移植3週後の頸部リンパ節転移率は、OSC-19細胞では83.3%、OSC-20細胞では16.7%であり、本モデルではOSC-19細胞がOSC-20細胞に比べて高転移性を示した。 2.舌移植腫瘍におけるMMPsの免疫組織化学的発現は、OSC-19細胞ではMMP-1(組織コラナーゼ)とMMP-9(92kDaIV型コラゲナーゼ)が陽性であったのに対して、OSC-20細胞ではMMP-1のみ陽性を示した。 3.舌移植腫瘍におけるゼラチン分解活性は、OSC-19細胞では12.8±6.9(u/g)、OSC-20細胞では7.8±4.2(u/g)であり、OSC-19細胞移植腫瘍の方が高値を示した。 4.舌移植腫瘍組織片の培養上清のゼラチン分解パターンをゼラチンサブストレートゲル電気泳動法を用いて検索したところ、OSC-19細胞とOSC-20細胞のいずれを移植した癌組織でもMMP-9とMMP-2(72kDaIV型コラーゲン)に相当する位置にバンドが出現した。特にOSC-19細胞移植腫瘍ではOSC-20細胞に比べてMMP-9のバンドが太く明瞭に認められた。 以上の結果より、頸部リンパ節転移に高率に転移するOSC-19細胞ではOSC-20細胞と比較してMMP-9の発現が顕著であり、口腔扁平上皮癌の頸部リンパ節転移にはMMP-9が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。今後は口腔扁平上皮癌の臨床材料を用いて検討を行ってゆく予定である。
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