研究概要 |
本年度は増殖細胞核抗原(PCMA)について重点的に検討した。すなわち、ヒト口腔扁平上皮癌およびラット下顎頭において以下の免疫組織化学的検討を行った。 1)迅速パーオキシダーゼ法(Dako Quick Staining System) 高感度の標識アビジン-ビオチンを利用した方法。抗PCNA抗体(Dako PC-10)を用いた検討では染色に要する時間は短時間ではあったが、非特異的染色像が認められ、陽性細胞の判定が困難であった。種々の試薬による非特異的反応の阻止を試みたが不可能であったため、陽性細胞率の定量的解析には適さないと思われた。 2)EPOS-PCNA(Enhanced Polymer One Step Staining-PCNA) ポリマーに多数の抗体とペルオキシダーゼが結合しているため、1ステップの反応の後、直ちに発色反応が可能。Dako EPOS/HRP-PCNAを用いたところ、染色性は良好で、染色時間の大幅な短縮が可能となった。 上記の結果をもとに、EPOS-PCNAによる免疫組織化学染色法と抗PCNA抗体を用いた以下の方法との間に差異があるかどうかについてヒト口腔扁平上皮癌およびラット下顎頭において検討した(頭頸部腫瘍 20:2:250,1994、第3回日本硬組織研究技術学会抄録集 8,1994)。(1)(2)(3)についてはABC法を用いた (1)Dako PCNA(1:100)室温 60分 (2)Dako PCNA(1:100)4℃ overnight (3)オートクレーブ処理(10分間)後、Dako PCNA(1:100) 室温 60分 (4)Dako EPOS-PCNA 室温 60分 その結果、口腔扁平上皮癌では(1)(2)(3)(4)いずれにおいても腫瘍細胞の核に一致した陽性像が認められた。ラット下顎頭においてはいずれの染色法でもPCNA陽性細胞は、増殖層、肥大軟骨細胞層に見られた。陽性細胞の視認性および陽性率については(4)>(3)>(2)>(1)の順であった。以上の結果からEPOS-PCNAを用いた染色法は、簡便かつ迅速に染色結果を得ることができ、有用と思われた。しかし、口腔扁平上皮癌のなかで、陽性率が非常に高値を示す症例がみられたため、この点の解明が必要である。
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