研究概要 |
口腔領域に発生する小唾液腺腫瘍について遺伝子関連抗原の発現を免疫組織学的に検出し、その発現頻度および組織内の局在様式について検討した。平成6年度は腺様嚢胞癌、多形性腺腫を対象として,c-myc,ras,c-erbB-2遺伝子産物関連抗原およびEGF受容体(EGF-R)の発現について検索した。腺様嚢胞癌ではc-myc蛋白は高率の陽性所見が得られたが、組織学的なgradeとはあきらかな関連は見られなかった.ras p21蛋白、c-erbB-2蛋白は分化度の高い症例で高率に陽性所見が得られ、細胞の分化に関連している事が示唆された。また散在性に増殖している腫瘍細胞、腺管構造様の腫瘍細胞に強い陽性所見が見られ、浸潤性の増殖への関与が疑われた。また、EGF-Rは比較的低率であった。多形性腺腫では c-erbB-2蛋白が高率の陽性所見を示した.PCR法によるc-myc,c-src,ras,c-erbB-2遺伝子の発現頻度、発現頻度、発現量の検索は現在進行中であるが、過剰発現の検索における正常のコントロールをどうとるかということが現在の問題点であり、口唇に生じた粘液嚢胞を摘出する際に小唾液腺を採取しコントロールにすることを考慮中である。また以上の検索した結果と臨床データーとの関連を比較検討する目的で、腺様嚢胞癌(20例)、多形性腺腫(20例)、粘表皮癌(20例)について、臨床所見、組織学的所見、および予後についてまとめた。平成7年度については、粘表皮癌(20例)について同様の検索を行い、小唾液腺腫瘍における腫瘍関連抗原と癌遺伝子発現の状態を明らかにし、さらに臨床との関連について考察する予定である。
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