口腔の小唾液腺腫瘍(多形性腺腫19例、粘表皮癌20例、腺様嚢胞癌17例)について癌遺伝子関連抗原(c-myc、 rasp-21、 c-erbB-2)およびEGF、EGF受容体(EGFR)の発現を免疫組織学的に検出し、発現頻度、組織内の局在様式について検索した。また免疫組織学的に検索を行ったもののうち、保存状態の比較的良好な摘出標本(多形性腺腫13例、粘表皮癌15例、腺様嚢胞癌7例)を用い、PCR法によりc-myc、 rasp-21、 c-erbB-2について遺伝子の増幅を行い、その発現頻度、発現量について検索した。免疫組織学的検索では、多形性腺腫の19例において明らかなEGFの発現は79.0%、EFRは15.8%、c-mycは63.2%、rasp-21は52.6%、c-erbB-2は0%であった。同様に粘表皮癌の20例では、EGFの発現は10%、EGFRFは80%、c-mycは70%、rasp-21は20%、c-erbB-2は0%であった。腺様嚢胞癌の17例では、EGFの発現は5.9%、EGRFは0%、c-mycは82%、rasp-21、c-erbB-2はともに0%であった。EGFの発現は多形性腺腫、EGFRの発現は粘表皮癌で高率に認められた。またc-mycの発現は、いずれの組織型においても60%以上に認められ、多形性腺腫、粘表皮癌、腺様嚢胞癌の順に、その頻度は増加し、特に腺様嚢胞癌では強陽性を示した。PCR法によるc-myc、 rasp-21、 c-erbB-2についてしの検索の結果は、免疫組織学的検索の結果とほぼ同様な傾向が認められた。以上の結果と予後との関連について検討したが、これまでのところ明らかな関連性は見いだしていない。今後更に子細な検討と、癌抑制遺伝子との関連、ras遺伝子の点突然変異の有無について更に検索する予定である。
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