研究概要 |
1)パラクリン様式によるEGFの影響 ヒト口腔扁平上皮癌細胞5系を用いてEGFのパラクリン的作用を検討した所,EGFによりintercellular migration,randam motility,細胞外マトリックス分解酵素(MMP-9,u-PA)産生等の増強が認められ,EGFがヒト口腔扁平上皮癌細胞の浸潤転移に促進的に作用する可能性が示された。しかし、その応答性と細胞のEGF受容体数との間に相関性は認められなかった。(日口外誌40:6-13,1994) 2)オートクリン様式によるEGFの影響 今回の検討中に、検討に用いた5系の細胞株の中に2系のEGF産生能を持つ細胞が偶然見い出された。この癌細胞が産生するEGFにより、自己および他の産生しない3系の運動能が促進され、EGFがオートクリン様式によっても、その浸潤転移能を促進する可能性が示された。(Oncologia vol27:455-457,1994)この様なオートクリンループが、ヒト口腔扁平上皮癌細胞において存在する事の報告はなく、貴重な知見と考えられた。 3)シグナリングの解析 EGFに対する応答性の最も高いCa9-22細胞を用いシグナリングを解析した所,PLCγを介する系によりヒト口腔扁平上皮癌の浸潤転移が促進することが明らかとなった。(投稿準備中) 初年度において、以上1)〜3)の主たる成果が得られ、方向性としては、これを礎に次年度以降、計画書に沿って解析を進める予定にしている。
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