近年、チタンは生体適合性が良いことより、歯科・口腔外科領域で生体材料として広く利用されてきている。しかし、実際に生体材料として使用される骨組織において、チタンと骨芽細胞との関連をin vitroで検討した報告はあまりみられない。我々は今までチタンプレートと骨芽細胞との親和性について一連の研究をおこなってきた。その結果、細胞は非常に早期にチタンプレートに付着すること、プレートの表面形状により細胞付着が異なることを明らかにした(日本口腔科学会雑誌 1995 4月)。さらに、細胞に放射線照射をすると細胞付着が低下すること報告してきた(1994年日本骨代謝学会、日本口腔科学会雑誌投稿予定)。最近、各種のサイトカインが骨組織に存在していること、しかも骨芽細胞の機能を調節している可能性のあることが明らかになってきた。そこで骨組織に存在し、しかも一連の炎症過程に重要な役割を演じているTGF-βが骨芽細胞のチタンプレートへの細胞付着にどのように影響するか検討した。 骨芽細胞としてはマウス頭蓋骨由来のMC3T3-E1細胞を使用した。コンフルエントから2-3日経過した細胞に、TGF-βを投与し24時間あるいは48時間後に細胞を剥しチタンプレートに撒いて細胞付着を検討した。その結果、加えたTGF-βの容量に依存してプレートへの細胞付着能が増加することが示された(1994年日本口腔科学会総会)。さらに細胞のステージを増殖期からコンフルエント直前の時期、コンフルエントから2-3日経過した時期、コンフルエントから1週間経過した時期と分け、それぞれのステージでTGF-βの反応性を検討した。その結果、コンフルエントになってから集めた細胞が効率よくプレートへ付着することが示された(1994年日本口腔外科学会総会)。以上の結果から、TGF-βはチタンプレートへの細胞の初期付着に重要な役割を演じている可能性のあることが示唆された。
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