我々は、種々の腫瘍株細胞を用いて抗癌剤および放射線療法におけるSODの役割について検討を行い、腫瘍細胞中のSOD活性が上昇することが解かった。また、培養した腫瘍細胞の抗癌剤あるいは放射線にたいする感受性は、SOD活性と明らかに相関があるという結果も得られている。そこで、今回は、これらの基礎的な研究を発展させ、以下の目的のための研究を行った。 1.腫瘍組織の放射線あるいは抗癌剤に対する感受性の予測。 2.腫瘍組織の放射線あるいは抗癌剤に対する耐性獲得のメカニズムの解明。 3.TNF、IFNの細胞内SOD活性に及ぼす影響について。 4.腫瘍細胞のSODを低下させる因子について。 その結果、初診時生検組織に比べ、放射線もしくは化学療法後の手術摘出時の腫瘍細胞では、Xanthin-xanthin oxidaseを用いた系において細胞内のSOD活性が若干上昇している傾向を思わせる値が検出された。しかしながら、試験切除時における検体の採取が十分にえられず、また患者個々において腫瘍の大きさや進行状態、治療法が一定でないため、治療経過に伴った変化の測定が十分でない。 手術摘出物およびそれよりえた腫瘍株細胞に放射線もしくは抗癌剤を処理すると、Xanthin-xanthin oxidaseを用いた系において細胞内のSOD活性が若干上昇している傾向を思わせる値が検出された。 手術摘出物およびそれよりえた腫瘍株細胞にTNFもしくはINF-γを作用させると、細胞内のSOD活性が若干減少しているようにみられた。 ヒト偏平上皮癌細胞株に活性酸素を曝露した際、CuZnSOD、カタラーゼ、GSH-pxといった活性酸素のscavengerのmRNAが、20分という比較的短時間に誘導されることが解った。また、主にミトコンドリアに存在するとされるMnSODのmRNAは、同様の条件では誘導されなかった。
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