平成6年度、末梢血好中球のアポトーシスによる細胞死が、サイトカイン(IL-1β、IL-6、IL-8、G-CSF、TNF-α、IFN-γ)白血球走化因子(FMLP、C5a)や細胞由来物質(LPS)によって修飾されることを報告した。以上の結果を踏まえて、平成7年度は、顎変形症の診断で外科的手術を施行した患者の術前、術後の末梢血好中球及び血清を用いて好中球のアポトーシスの動態について検討した。なお、対象とした患者は重篤な基礎患者や樹後経過中に炎症性の合併症を併発しなかった者を選択した。患者の末梢血好中球は、術前の安静状態或いは術後の急性炎症状態に採取したものの、双方にアポトーシスによる細胞死の経時的な割合に変化はなかった。一方、術後に採取した血清は術前と比較して、好中球アポトーシスに対して促進的に作用した。また、血清中の可溶性Fas抗原は、術後に減少することがわかった。これらの結果から、今回の対象症例のごとく、明らかな細菌感染症を伴わない炎症状態では血清中の可溶性Fas抗原の減少によって血中に増加した不要な好中球がアポトーシスという現象で消去され、生体にとって合目的と考えられる。 今後は、以上の研究成果をもとに難治性粘膜疾患(偏平苔癬、再発性アフタ)や難治性感染症などの患者由来の好中球や血清を用いて、好中球アポトーシスの動態を検討し疾病の発症や遷延との関係について検索を重ねたいと考えている。
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