まず前年度までの実験で得られた、OVX群とLC群の脛骨で測定したデーターと、今回行なった顎骨の骨密度の測定結果の相関性について検討した。今回DEXAを用いて測定した顎骨の骨密度は、コントロール群と比較してOVX群では若干低下しているようであったが有意差はなく、LC群では約10%程の低下であった。これらは脛骨のデーター(OVX群4〜8%、LC群15〜20%の低下)に比較して減少量が少なく、これは兎の顎骨には骨髄腔がほとんどなく大部分が緻密骨であるという構造的な問題と、顎骨は解剖学的に複雑な形態をしているので、DEXAを用いて測定できる部位が限局していることなどによるものと思われる。次にこの動物を用いて、本研究の目的とするオッセオインテグレーションしたインプラントの被圧変化に、骨塩量の低下がどのよう影響するかについて検討するため、顎骨に植立したインプラントに補綴物を装着し飼料を咬ましてみた。OVX群は骨密度の低下が見られなかったので今回は除外し、コントロール群とLC群の比較検討を行ったところ、LC群でインプラント周囲に線維性の結合組織が多く見られる部分が存在し、コントロール群と骨の接触率に違いがあるような傾向が見られたが、炎症性の反応や骨吸収などはほとんど見られなかった。今回の実験では兎を用いたため歯牙も小さく、咬み合わせの調整が困難で、インプラントに掛かる咬合圧を適正化できているかどうかはわからないし、観察期間が短期間であったので、今後はもう少し大型動物を用いてインプラントに掛かる被圧量を一定にし長期的な変化について検討したいと考えている。
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