手指を用いた古典的2点識別法(MTPP)で圧痛あり(MTPP+)と診断された女性顎関節症患者48名(平均年齢34.5±15.4歳、平均体重48.1±5.2kg)および咀嚼系に異常を認めない女性健常者19名(平均年齢33.2±12.4歳、平均体重53.8±6.8kg)を対象に側頭筋前部筋束部、咬筋下部、咬筋中央部、下顎枝後縁部の4カ所より、加圧疼痛閾値(PPT)を収集した。加圧疼痛閾値計は表面積1cm^2で、500g/sec.の一定増加率で加圧し、圧迫感が疼痛に変化した時点の値をPPTとした。 MTPPを至適基準(ゴールド スタンダード)とした場合の有病率(事前確立)はそれぞれ0.47、0.48、0.54、0.64であった。PPTのカットオフポイント:分割点(側頭筋前部筋束部:2.0kg、咬筋中央部:2.0kg、咬筋下部:2.0kg:下顎枝後縁部:1.5kg)での事後確立、すなわちPPTで圧痛ありとなった場合にMTPP+と診断される事後確立(真陽性/(真陽性+偽陽性))はそれぞれ0.69、0.63、0.76、0.82で、PPTで圧痛無しとなった場合にMTPP+と診断される事後確立(偽陰性/(偽陰性+真陽性))は0.26、0.16、0.26、0.43であった。またそれぞれの精度((真陽性+真陰性)/n)は0.72、0.68、0.73、0.64であった。このようにPPTによる診断の有用性には一部問題があったため、個人の圧痛感受性を示す下顎枝後縁PPTを用いて、PPTを指数化して検討した。 その結果、PPT index=log(((PPTx/(PPTa+PPTb+pptc))PPTy)の式が最も高い事後確立が得られた(PPTx:計算部位のPPT、PPTa:側頭筋前部筋束部PPT、PPTb:咬筋下部PPT、PPTc:咬筋中央部PPT、PPTy:下顎枝後縁部PPT)。その結果、PPT indexで圧痛ありとなった場合のMTPP+である事後確立は、側頭筋前部筋束部、咬筋下部、咬筋中央部でそれぞれ0.88、0.71、0.73であり、PPT indexで圧痛無しとなった場合のMTPP+である事後確立は0.11、0.28、0.26であった。その精度は0.88、0.79、0.77となり、PPT診断より約10%の上昇がみられた。
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