研究概要 |
小児歯科治療に対する患者のストレス反応をサーモグラフィーを用いて数量的把握を行った。対象は,5歳から11歳までの心身共に健常な小児患者20名とした。サーモグラフィーの測定は日本電気三栄社製赤外線放射温度計サーモトレーサー6T67を用い感度幅は0.3℃,中心温度は各被験者に応じて適正に調整し,走査時間は1秒とした。先ず,各被験者の右手の手背皮膚温のコントロールをとるため,約15分間の安静時をとった。その後,各被験者の小児歯科治療の経過に従い,手背皮膚温の観察をモニター上で行い,フロッピ-ディスクに記録した。温度分析は,第2,3,4指を領域指定し,領域内平均温度を求めた。 20症例中15症例は治療初期より温度低下を示し,治療の進行に従い徐々に温度回復が認められた。3症例においては,治療初期より徐々に温度上昇を認めたがいずれのケースも歯科的ストレス度の低い治療内容であった。浸潤麻酔を用いたケースは13症例あり,その内12症例においてコントロール時に比し約-0.1〜-1.8℃の温度低下を認めた。歯牙切削を行ったケースは13症例あり,その内8症例はコントロール時の皮膚温より温度低下を認めた。抜歯ケースは2症例あったが,いずれもコントロール時に比し-2.0℃以上の著明な温度低下を認めた。 以上より,小児への歯科治療の侵襲の程度により,サーモグラフィーで小児のストレス反応を数量的に把握することが可能であることが判明した。また,非接触的かつ身体制限がなく計測できるサーモグラフィーは,特に小児に対して有効な方法であることが認められた。
|