研究概要 |
小児歯科診療時において,母親が術者に及ぼす心理的ストレス反応尺度を試作し,信頼性と妥当性の両面より検討を行った。対象は,本学小児歯科学講座に在籍する歯科医師22名である。本ストレス構成要素として9つの内容(母親の態度,母親の言語,母子関係,母親の性格,母親の信頼度,母親の理解力,母親の要求度、母親による時間的要因,術者による要因)を仮定した。母子関係は,さらに4分類した。このカテゴリーに基づいて,質問文を5項目ずつ12組(合計60問)のアンケート2を作成し,術者に回答させ数量化した。そして,因子分析を行い7因子,20項目が抽出された。第1因子は「要求過剰な母親」,第2因子は「コミュニケーション不全の母親」,第3因子は「厳格・神経質な母親」,第4因子は「過保護な母親」,第5因子は「心配症な母親」,第6因子は「多弁な母親」,第7因子は「感情的な母親」と命名した。以上より,母親が術者に及ぼす心理的ストレス反応尺度が作成された。信頼性は,Cronbachのα係数を用いた内的一貫性と経時的安定性の両面より検討を行った。妥当性については,日常生活における心理的ストレス反応尺度(PSRS)との比較検討をした。PSRSの回答結果の合計得点により高ストレス群と低ストレス群に分け,各群に対応する母親が術者に及ぼす心理的ストレスの得点を求めた。その結果,高い信頼性と妥当性が認められた。 術者から母親への対応技術向上のための行動科学的トレーニングの有効性について自信度の面より検討した。本学小児歯科学講座に在籍する歯科医師13名(対照群7名,トレーニング群6名)を対象に,「母親への対応における自信度調査アンケート」を用いてトレーニングの評価を行った。その結果,トレーニング群における自信度が対照群に比し有意に上昇し、行動科学的トレーニングの有効性が認められた。
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