本研究は、平成6年度から平成8年度まで3年間にわたる継続研究であり、研究の目的は乳歯歯根吸収の開始期から脱落期まで通したプロスタグランディンE_2(PGE_2)の歯根吸収への関与を検索することである。 平成6年度は、妊娠ウサギを飼育して妊娠期間31日および28日に産れた仔ウサギを2群に分け、実験群にはPGの合成阻害剤であるインドメサシンを10.0mg/kgのdose量で、対照群には生食水を同じ割合で、それぞれ屠殺9時間前および3時間前の2回腹腔内に投与し、エーテル吸入後、各時期に屠殺した。屠殺後直ちに両側の乳切歯歯根周囲のいわゆる歯根吸収組織を一隗として取り出し、湿重量を測定後、RIA法によるPGE_2測定までの間冷凍保存した。1頭から採取できる歯根吸収組織は小量であるため、RIA測定には3〜4頭集めて0.3mg以上にしたものを1サンプルとした。また、比較のため口蓋粘膜組織中のPGE_2量も測定した。PGE_2のRIA測定はAmersham社製PGE_2[^<125>I]RIA用キットを用いた。 本年度に得られた結果は、乳歯歯根吸収開始期(生後13日目)に関するものである。1.対照群においては、歯根吸収組織のPGE_2含量(90±22pg/mg)は口蓋粘膜組織のPGE_2含量(35±22pg/mg)に比べ有意に高かった。2.実験群では、歯根吸収組織のPGE_2含量(41±22pg/mg)は口腔粘膜組織のPGE_2含量(46±17pg/mg)と差はなかった。3.対照群と実験群との歯根吸収組織中のPGE_2量には有意な差があり、インドメサシンの投与によりPGE_2の産生が抑制されることが認められた。 平成7年度および8年度は、その他の時期におけるPGE_2量の測定と各時期の出現する破歯細胞数および歯根吸収量の測定を行う予定である。
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