平成7年度は、いわゆる“歯根吸収組織"中のPGE_2含量が乳歯歯根の吸収開始初期から乳歯脱落期までにどのように変動するかを知る目的で実験を行った。実験には、57羽の仔ウサギ(ニュージーランド白色種)を用いた。これらを生理食塩液を投与したもの(以下コントロール群)と、インドメサシン10.0mg/kgを投与したもの(以下インドメサシン群)の2群に分け、それぞれ屠殺9時間前および3時間前の3回腹腔内に注射し、初期の歯根吸収活動期の生後9日目と13日目、中期の休止期の生後17日目、後期の歯根吸収活動期の21日目、および脱落期の生後25日目に断頭屠殺して上顎骨を取り出し、両側の上顎乳切歯歯根吸収組織と口蓋粘膜を摘出して、湿重量を測定後、PGE_2含量測定に供した。PGE_2の測定は、Amersham社製、PGE_2[^<125>I]RIA kitを用いて測定した。 現時点でデータ集計が完了している生後13日目、17日目、21日目に対して検討を行った。コントロール群の歯根吸収組織は、全ての時期でインドメサシン群の歯根吸収組織より有意に高いPGE_2量を示した(P<0.05)。コントロール群の歯根吸収組織のPGE_2量を比較すると、13日目(556±459pg/mg)は17日目(180±98pg/mg)より有意に高い値を示した(P<0.05)が、17日目と21日目(253±128pg/mg)の間には有意な差は認められなかった。歯根吸収組織と口蓋粘膜組織とのPGE_2含量を比べると、13日目および17日目は有意に歯根吸収組織のほうが高かった(P<0.05)が、21日目は両者に差は認められなかった。口蓋粘膜組織のPGE_2含量は13日目(20±21pg/mg)と17日目(60±47pg/mg)との間に差はなかったが21日目(326±131pg/mg)は他と比べ有意に高かった(P<0.05)。以上の結果より、乳歯歯根吸収の各時期で歯根吸収組織のPGE_2含量は異なり、初期の吸収活動期は、休止期や乳歯脱落期よりPGE_2の産生が増加することが認められた。口蓋粘膜組織中のPGE_2量も発育につれて変動することが認められた。
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