研究概要 |
ウィスター系ラット4週齢の右側下顎臼歯抜歯窩よりStreptococcus mutans(血清型c)株を過剰免疫した実験群の凍結切片を、ACAS570レーザーサイトメーターを使用し蛍光画像解析した実験結果より、右側冠状動脈起始部血管壁にIgG,IgA,IgM,C3の局在が観察され、同部にimmune complex type vasculitisが生じていたことが明らかとなった。更に冠状動脈開口部には、実験群のみ血栓塊が観察され、冠血流量の急激な低下が想定できた。また右側冠状動脈内壁には多数の変形赤血球、活性化血小板、リンパ球の付着が確認されると共に、内皮細胞の透過性亢進が認められた。本実験結果はヒトの川崎病所見と一部類似していた。川崎病の血管炎は血栓形成を伴う血管炎(癌形成)を特徴とするが、最近アスピリン大量_γ-グロブリン静注療法により、突然死が減少してきた。その作用機序は不明のままであるが、本実験で示された冠状動脈起始部に生じた免疫複合体を大量の_γ-グロブリンが解離する作用機序が考えられる。 癌細胞の転移浸潤、リンパ球のローリング現象と関連性を有する細胞接着分子の共通の糖鎖リガンドであるsialy1 Lewis^x(sLe^x:sialic acid α2-3Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc)が、心疾患患者から高頻度に分離される各種レンサ球菌表層に発現しているか否かを抗sLe^xモノクローナル抗体を使用した酵素免疫測定法及び免疫組織電子顕微鏡法にて解析した結果、A群溶連菌及びS.millerigroupに強度にsLe^x様構造が発現していた。この事実は、A群溶連菌及びS.milleri groupが原発巣から血行性のtranslocationをきたす機構において、重要な要因となる可能性を示唆するものである。 以上、得られた所見はレンサ球菌によって惹起される心疾患の発症機序の解明に役立つものと考えられる。
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