今回、咬合高径の増大および臼歯咬合接触の有無が咬筋活動に与える影響について知るために、以下の方法で調査検討した。 咀嚼機能に特に問題の無い成人男子10名を被験者として、条件A(前歯部咬合挙上板装着時)と、条件F(全歯列接触型咬合挙上板装着時)、および条件C(何も装置を装着しない状態)の3条件下における終日の咬筋筋電図を、「終日筋電図採得分析システム」を用いて記録した。筋電図採得に先立ち、最大咬みしめを各被験者に行なわせ、それぞれの最大電位の、1/16(レベル1)、1/4(レベル2)、1/2(レベル3)及び3/4(レベル4)の各電位をスライスレベルとした。そしてそれぞれのレベルを越える波形に関して、その時間と回数について集計を行ない、二元配置分散分析及びt検定による有意差検定を行なった。 得られた結果は次の様であった。 1.覚醒時、睡眠時、終日の全レベルにおいて筋活動時間、回数ともに個体差が大きく、被験者の平均値に対する標準偏差はレベル1、2、3、4とレベルが大きくなるに従って大きくなっていた。 2.レベル1においてのみ、覚醒時、睡眠時、終日のすべてにおいて、被験者間に有意差が認められた。 3.睡眠時レベル1における筋活動時間は、条件Cに対して条件A、Fで有意に減少していた。 4.睡眠時のレベル2、3においては、被験者間に有意差は認められず、筋活動時間、回数ともに条件Cに対して条件A、Fで有意に減少しており、回数の減少よりも時間の減少の割合のほうが大きかった。 5.レベル4においては、被験者間、条件間ともに有意差は認められなかった。 6.覚醒時、睡眠時、終日の全レベルにおいて、条件AとFの筋活動に有意差は認められなかった。 以上より、装置装着により顎間距離を増大させると、睡眠時の咬筋筋活動が有意に減少することが示された。
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