研究概要 |
当該年度は集団の口臭特性をさらに追求することを目的とし,特に今まで情報が欠けていた疫学的見地からの唾液性状と口臭の関係と,歯周組織との詳細な関連を知るために,35歳〜60歳の一般人201名を選びポ-タブル口臭測定器(ハリメーター)を用いて調査を行った。唾液の分析項目は刺激唾液流出量,pH,唾液中のヘモグロビン含有濃度の測定であり,口腔審査項目は,舌苔量の評価と歯周健康状態については現存する全歯牙周囲を対象にプロービング後の歯肉出血,歯周ポケットの深さ,上皮付着位置の喪失量(アタッチメントロス)を評価した。臨床診査に先立って,各被検者に何らかの疾患があるならばその疾患名,あるいは全身健康状態,および常用薬の種類,服用頻度,量を問診した。併せて,口臭の自覚についても尋ねた。結果は, 1) 対象者201名のうち全身疾患や薬剤の服用などによる調査不適格者はいなかった。 2) 口臭原因物質である揮発性硫化物濃度と口臭の自己評価とはなんら関連が認められなかった。 3) 揮発性硫化物濃度には男女間で,また年齢グループ間で有意差がなかった。 4) 刺激唾液流出量の多少が揮発性硫化物濃度の高低に影響を与えなかった。この結果は一方で,一般健常人の中には極端に唾液分泌が少ない,もしくは多い人が希であることを示唆している。 5) 唾液pHと揮発性硫化物濃度には関連が認められなかった。 6) 舌苔量は揮発性硫化物濃度と強い相関を示した。 7) 歯周疾患のパラメーターとしてのヘモグロビン唾液含有濃度や一人平均歯周ポケットの深さなどは口腔内気体中の揮発性硫化物濃度のレベルに反映されなかった。 8) しかしながら、6mm以上の歯周ポケットの深さを呈す部位数および6mm以上のアタッチメントロスを呈す部位数と揮発性硫化物濃度のレベルには有意な相関関係が認められた。このことは、単に歯周疾患に罹患しているかどうかよりも活動性の病態を示す体積が問題であることを示唆している。 本調査の結論として,口臭原因として歯周疾患よりも舌苔量がより強いことが示唆された。
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