新鮮抜去永久歯から分離精製したナメル質粉末を錠剤状に加圧成型したエナメル(以下、Enamel Disk)を材料として用いた。Enamel Diskの平滑面に2%-NaFを40μl塗布し、同時に4種の照射条件で248nm KrFレーザー光照射を行った。 Enamel Disk表面の解析は、SEM像の観察、薄膜X線回折法を応用したフロルアパタイト濃度の測定、XPS分析定を行った。また、0.4M酢酸緩衝液(pH4.0)に5分間浸漬し、溶出したCaを定量する耐酸性試験を行った。 SEM像は、単独照射では、レーザーアブレーションを僅かに認めるが、2%-NaF塗布とレーザー光照射を同時に行ったものでは平滑化がみられた。 薄膜X線回折法によるFAp濃度の測定では、2%-NaF塗布のみでは、Enamel Disk表層にFApの生成が認められなかった。しかし、2%-NaF塗布とレーザー光照射を同時に行った群では、10〜16%のFApが認められた。 耐酸性試験は2%-NaF塗布とレーザー光照射を同時に行った群は、いずれも非照射に比較して耐酸性の付与が認められた。 エナメル質は吸収線量が100mJ/cm^2を越すとレーザーアブレーションを起こし、この現象が激しく発生すると効果的な光化学反応は期待することができない。本研究では、レーザーアブレーションを可及的に抑える条件下で行った。高濃度のFAp生成を認め、耐酸性が、非照射に比べ約20%改善され、さらに耐酸性の付与とFAp生成の関係がよく一致する傾向を示したことからもEnamel Diskへの至適照射条件は、70mJ/cm^2、2000shotであると考えられた。
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