歯科用金属によるアレルギーの発現については、多くの症例が報告され、作用機序の解明とともに簡易なスクリーニング法の確立が望まれている。そこで今回、水銀やクロムなどに加えてチタンやインジウムなど新しい歯科用金属についてヒトの多数例でのパッチテストによるスクリーニングを行うとともに、実験動物を用いた皮膚感作性試験によるスクリーニング法を検討し、以下の結論を得た。【1】健常者595名を対象者としてパッチテストを行った結果、陽性率は水銀>コバルト>亜鉛>マンガン>スズ>ニッケルの順であった。いずれの金属も試験濃度が高いとアレルギー反応に刺激性が加わり陽性率が高くなり、刺激性との判別が可能な試験濃度の設定が重要であることを示した。【2】水銀やチタン化合物では、化学形態によりパッチテストでの陽性率に差がみられ、イオン化やキャリア蛋白との結合などの抗原化のメカニズムが化学形態により異なることを示唆するものであった。【3】モルモットを用いて二種の皮膚感作性試験(Buehler法およびMaximization法)を行ったところ、水銀やクロム、ニッケル、スズ、銀のいずれの金属も感作性の可能性があることを示すとともに、銀とパラジウム、クロムとニッケルとの交差感作性を認めたが、モルモットの場合も感作濃度の設定に問題があった。【4】Buehler法とMaximization法とで感作性の結果が異なり、特にアルミニウムChamberを用いるBuehler法では試験金属とアルミニウムとの化学反応により刺激性が加わり、試験法の問題点が明らかとなった。以上のことから、ヒトに対するパッチテストやモルモットに対する皮膚感作性試験のいずれのスクリーニング法とも問題点が多く、特に刺激性との判別のためには試験濃度が重要であることがわかった。次年度は適切な試験濃度を設定し、さらに簡易で鋭敏なアレルギー発現のスクリーニング法を検討したい。
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