歯科用金属によるアレルギーの発現については、多くの症例が報告され、作用機序の解明とともに簡易なスクリーニング法の確立がのぞまれている。そこで今回は、健常者でのパッチテストの例数を追加するとともに、皮膚症状を呈したアレルギー患者での歯科用金属の分析や、モルモットによる皮膚感作性試験を行い、以下の結論を得た。 【1】健常者734名を対象として歯科用金属15種についてパッチテストを行った結果、水銀(12.0%)や、コバルト(7.1%)、亜鉛(3.0%)、ニッケル(2.5%)で陽性率が高く、刺激性の強い銀(0.7%)、銅(1.0%)で陽性率が低く、アルミニウムで陽性者がみられなかった。また水銀やコバルト、ニッケルでの陽性率は、女性で有意に高く、感作の機会が女性に多いことを示した。【2】手足に扁平苔癬の症状を呈したアレルギー患者の口腔内金属の分析とパッチテストを行ったところ、金(13%)、銀(50%)、パラジウム(19%)、銅(14%)および亜鉛(2%)を組成とした金・銀・パラジウム合金が5歯に補綴用として使用されていた。一方パッチテストの結果では、金や銀、パラジウム、銅、水銀などは陰性で、亜鉛が陽性であったことから合金の主成分ではないが2%程度含有の金属によっても著しいアレルギー症状を呈することが示された。現在臨床的な処置を踏まえて経過を観察中である。【3】モルモットを用いた水銀の皮膚感作性試験では、惹起を繰り返すことにより陽性率が高くなったことから、水銀と繰り返し接触することにより感作性が強くなることを示した。また惹起の間隔が長くなると陽性率が低下する傾向がみられ、水銀の感作性は持続的なものではないこともうかがえた。金属との繰り返し接触によるアレルギー性への影響は今後の課題である。
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