歯科用金属によるアレルギーの発現については、多くの症例が報告され、作用機序の解明とともに簡易なスクリーニング法の確立が望まれている。そこで今回、水銀やクロムなど歯科用金属のアレルギー性をスクリーニングする方法として、ヒトではパッチテストを、モルモットではMaximization法やBuhler法を、マウスではMouse Ear Swelling(MEST)法を検討し、以下の結論を得た。【1】健常者839名と対象として16金属と植物アレルゲンのウルシについてパッチテストを行ったところ、最も陽性率の高い水銀で7.7%であったが、ウルシの陽性率10.8%よりも低かった。陽性率の順は水銀>コバルト>亜鉛>スズ>マンガン>ニッケル>金>パラジウム>インジウム>クロムであったが、アルミニウムやイリジウム、銀、チタンで陽性率が低かった。コバルトやニッケル、亜鉛では、男性に比べて女性の陽性率は有意に高く、女性が化粧品や装飾品などにより感作の機会が多いことを示した。また花粉症や食物、薬物アレルギーなどのアレルギー経験者で金属のパッチテスト陽性率が高く、アレルギー経験者は歯科用金属にも感作されやすいことを示唆した。【2】モルモットを用いて2種の皮膚感作性試験を行ったところ、試験法により異なる結果が得られたが、いずれの金属も感作性の可能性があること、また水銀の繰り返し惹起により陽性率が高くなることを示した。【3】安価でかつ短時間にマウスを用いて感作性をスクリーニングできるMEST法を検討したところ、水銀やクロム、ニッケルでは初回で感作が成立せず、回数を重ねた感作の必要性がみられ、また皮膚の炎症が著しい場合にも感作が成立しないことを示した。以上の方法はいずれも、歯科用金属のアレルギー性のスクリーニングには有用であることを示したが、さらに試験濃度など条件の検討が必要である。
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