労働衛生学的観点から、歯科診療室における高周波騒音源となる歯科用エアータービンと超音波スケーラについて関心を持ち、可聴域から超音波域に至る範囲の周波数成分分析を手掛けてきた。本研究は、音響インテンシティによる音響パワー計測により、騒音源の騒音の強さそのものを計測しようとするものである。 初年度に購入した音響インテンシティ計測装置に、教室所有の2チャンネルFFTアナライザに接続し、クロススペクトル法により音響インテンシティを計測するシステムを構築した。その後、実験室において、歯科用エアータービン音に凝した5〜7kHzの単音を発生させ、音響インテンシティベクトル図を作成した。この予備実験によって、歯科用エアータービンのような、点音源に等しい騒音源には、マイクロホンの微妙な位置決めが測定結果に影響することが分かった。また、インテンシティ計測は、多点計測が必要であり、それぞれの点ごとに正確な位置を決めること、そのつどのFFTアナライザの操作が煩雑を極めることなど、計測に予想以上の労力を要することが判明した。 本年度は、多点計測を合理的に行なうために、製図版を改造した格子点移動装置を作成し、約60cm四方の範囲で任意の格子点における音響インテンシティベクトルを計測できるようになった。また、FFTアナライザーGPIB制御のパーソナルコンピュータにより半自動計測が可能になったため、多点計測に必要な時間が大幅に節約できるようになったのも成果の一つである。 現在は、何種類かの歯科用エアータービン音をデジタル録音し、それを疑似的にスピーカーから流して、スペクトル解析および音響インテンシティ計測をしている。 本年度はシステムの構築に多くの時間を費やしたため、初年度に予定した実際の歯科用エアータービン音の音響インテンシティ計測の学会報告等は、残念ながら次年度以降にならざるを得ないが、データを重ねて所期の目的を果たすべく実験継続中である。
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