研究概要 |
歯の硬組織の形成異常をひき起こす発生機序については、詳細には解明されていない。原因として、全身的なものと、局所的なものに大別して、口腔病理学成書等で記載されているが、発生機序についてはあまり記述されていない。本研究では、小児歯科臨床で遭遇する種々の形成不全歯について、医科的既往ならびに歯科的既往の明確な患者からの被検歯を採取して第一段階として組織形態学的観察および生化学的分析を行った。通法による切片標本の作成後、光顕での観察を行い、ついで、マイクロラジオグラムおよび2%オスミウム酸およびグルタールアルデヒドで後固定して、エポキシレジンで包埋した標本を透過電子顕微鏡で観察した。歯質の化学組成はX線マイクロアナライザーで定性的分析を行い、エナメル質生検法により行い、Ca、Mgは原子吸光法,Pはp-メチル-フェノール還元法を用いて定量的に分析した。現在までの研究経過は次の通りである。 (1)低石灰化型と低形成型の共存するエナメル質形成不全症の型がみられた。(2)カルシトニン分泌過剰症(287pg/ml)では歯根吸収窩や破歯細胞はみられず、骨様硬組織の肥厚が観察されたが、歯質のCaとPの比や量には異常は認められなかった。(3)歯牙異形成症では、歯冠部のエナメル質は低形成であり、厚さも薄く、痕跡後的な小滴ないし粒状の塊状物として観察された。象牙質は歯冠部の外套象牙質のみが異形成であり、歯根部の形成には異常はみられなかった。これに関して、今後、検索する必要があり、さらに実験動物を使用しての研究も必要である。
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