研究概要 |
今年度は,顎機能異常関連因子と考えられる事項について矯正初診患者のほとんど全員を対象にデータを採取し,約500となった.今年度はこれらのデータの蓄積と,方法論的に確立していない検査項目についてのその確立とを目標とした.以下おのおのの事項について述べる. 1)最大開口量について 最大開口量は,歯科矯正患者のように顎顔面形態がきわめて変異に富むものにおいては単純に比較することができないと考えられる.そこで,われわれは顎顔面形態と最大開口量の関係について統計学的に解析した.また,これらの処理を行うためのコンピュータソフトを開発した.まず,最大開口時の頭部X線規格写真を撮影し,通常の頭部X線規格写真と比較して下顎切歯移動量・下顎頭移動量と,顎顔面形態の計測項目との因子分析を行った.その結果,顎顔面形態を考慮すると最大開口量は下顎運動の約40%しか表現していないことがわかった.詳細は顎変形症学会および顎関節学会にて公表した. 2)性格検査について 性格検査としてはコンピュータで自動解釈できるMINIを施行した.MINIの結果を,顎変形症患者と通常の矯正患者とで比較し,顔貌の形態と性格特性に何らかの関連があるかどうかを調べた.ソフトウエアはわれわれがMacintosh版に移行したものを用いた.その結果,顎変形症患者は一般矯正患者に比べて猜疑心が強い・神経質である・内向的であるなどが明らかとなった.これより,MINIの結果には顔貌の変形の程度を考慮にいれねばならないことがわかった.詳細は顎変形症学会および歯科心身医学会にて公表した. 3)顎関節音について 顎関節雑音の評価は術者によって大きく左右されると言われている.われわれは顎関節音をMDディスクに記録し,周波数分析を行い,顎顔面形態との関連を統計学的に解析した.その結果,顎関節音は顎関節部の力学的負荷の状態を反映していることが示唆された.詳細は顎変形症学会・顎関節学会にて公表した. 4)プレスケールによる咬合圧の評価について プレスケールデータをセファロデータと統合させるべく,コンピューターソフトウエアを開発中である. 以上のような研究結果をもとに,今年度は顎関節機能異常との関連を統計学的に検索する予定である.
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