インスリン依存性糖尿病(IDDM)に類似した病態を示す自然発症糖尿病ラットを用い、IDDMに対しインスリン投与による血糖コントロールを行った条件下で、上顎側方拡大を行い、離開された正中口蓋縫合部の修復過程への影響および線維芽細胞成長因子(b-FGF)を同部に局注した際の修復過程に対する影響について病理組織学的に検討した。 実験には、BB/W-DPラット(生後12〜14週齢)を用い体重、尿糖および血糖値の測定を行い、糖尿病発症後から実験期間中はインスリン治療による血糖コントロールを行った。糖尿病発症2週間後、左右切歯に0.018インチステンレスワイヤーで150gの拡大力となるよう調整したopen helical springを2日間装着し、正中口蓋縫合を10mm離開させた後保定を行った。保定期間は1、3、5、7、14日間とした。b-FGFは離開した切歯間の歯肉粘膜下に保定開始時に50μgを1回局所投与した。 結果:1BB-FGF群では全実験期間を通じて修復機転が順調に行われていた。 2.BB-nonFGF群では、正常対照群と比べ初期において線維芽細胞や骨芽細胞は減少していた。 3.BB-FGF群ではnon-FGFに比べ線維芽細胞や骨芽細胞が豊富にみられ、骨の新生、添加が速やかに行われていた。 以上の結果より、糖尿病ラットにb-FGFを投与したところ線維芽細胞や骨芽細胞の活性が賦活され、上顎側方拡大後の正中口蓋縫合の修復過程が速やかに行われることが示唆された。
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