研究概要 |
ヒトデDermasterias imbricataより単離された含硫ベンジルイソキノリン型アルカロイドimbricatine(1)を合成し,その構造と絶対配置を決定することを目的として以下の研究を行った. 我々は既に1の南半球を(5R,10aR)-6,8-dimethoxy-5-(4-methoxybenzyl)-9-mercapto-1,5,10,10a-tetra-hydroxazolo[3,4-b]isoquinoline-3(3H)-one(2)として得ることに成功していたが,ひきつづき2に我々の5-arylthio-3-methyl-L-histidine類の一般的合成法を適用した.すなわち2を4-bromo-1-methyl-1H-imidazole-5-carbaldehydeと縮合後アルデヒド部を還元し,更にクロル体へと誘導後Schollkopfの不斉アミノ酸合成法により1の北半球を構成する3-methyl-L-histidine部を構築した.つづいてこのもののオキサゾロン環を開裂後,両アミノ基をBoc基で保護し,アルコール部をSwern酸化後,更にMeOH中I_2酸化してエステル体3へと導き,ここに1の全骨格を有する化合物3の合成に成功した.最後に全ての保護基の除去:(1)メチルエステルの加水分解(2)Boc基の除去(3)MeO基のOH基への変換が必要である.(1),(2)は容易に可能であると思われるが(3)には若干の困難が予想されたためモデル化合物(±)-1-(4-methoxybenzyl)-6,8-dimethoxy-1,2,3,4-tetrahydroiso-quinoline-3-carboxylic acid methyl esterとそのBoc体4を合成し脱メチル化条件を検討した.その結果,4に対して過剰のBBr_3を用いる方法により全ての保護基を除去できることが判明し,合わせて水溶性生成物の単離方法にも知見を得ることができた.今後,この条件を3に適用して1の合成を検討すると共に本研究目的の達成を目指す予定である.
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