研究概要 |
我々が単離・構造解明してきたポリフェノールの中には,抗ウイルス活性や宿主介在生抗腫瘍活性,各種酵素に対する阻害活性を有するものがあることが,明らかになってきている.ポリフェノール類の中でも,特にタンニンと呼ばれる中〜高分子のポリフェノールは,従来,タンパク質に対して非特異的に吸着すると考えられており,種々のポリフェノールの活性についても,こうした非特異的な作用が前提として考えられていた.そこで実際に検討してみると,ポリフェノールの化学構造の違いにより,また検討の対象となる活性により,著しく作用の強弱に差異が認められることが明らかになった.本研究ではこれらの活性の基礎となるポリフェノールとタンパク質との相互作用について明らかにするために,種々の植物のポリフェノールの精製を進めるとともに,ポリフェノール類の酵素との相互作用について,xanthine oxidaseを使用し,反応速度の面から検討を進めた.その結果,ポリフェノールの化学構造によって,non-competitiveな阻害を示すものと、uncompetitiveな阻害を示すもの,およびそのいずれでもない特異な阻害パターンを示すものがあることが明らかになった.こうした検討によって,酵素との反応速度の面から,酵素タンパクとポリフェノールとがどのように作用するかについての知見を得ることができることが,実際に確かめられた.他方,タンパク質との相互作用を行なうポリフェノールのうち,特に直鎖構造のグルコースを分子内に有するもの数種について,溶液中でのグルコースのコンフォーメーション,およびその周辺のアシル基の位置関係について明らかにし,分子全体が溶液中でとるコンフォーメーションについて知見が得られた.
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