アジノマイシン類は、強い細胞毒性を有し、マイトマイシンCに匹敵する抗腫瘍活性を示すことから注目を集めている抗生物質である。その活性発現の機構はinterstrand cross linkingを経るDNAの切断を含むことが明らかにされている。今回、著者はアジノマイシンAの全合成を最終目的に研究を展開すると共に、低毒性で、より強い活性を有する関連分子の開発を目指し、活性発現に必須な部分構造を有するシンプルな類縁体のデザインと合成に関する研究を行なった。 D-アラビノース、もしくはD-(-)-酒石酸ジエチルを出発原料に用いてアジノマイシンAのright-hand segment(1)の合成ルートの確立を目指した。種々検討の結果、化合物(2)-(4)のアラル合成に成功し、(1)の合成に大きく接近することが出来た。また、先に著者がその新たな合成法を開発したleft-hand segment(5)とright-hand segmentモデル化合物とのカップリングを検討し、その方法を確立することが出来た。現在、(2)-(4)と(5)とのカップリングによりアジノマイシン類縁体の合成を検討中であり、それらのDNA切断活性の評価を行なう計画である。さらに今回の研究で得た知見を基に、(2)の合成と(3)とのカップリングによるアジノマイシンAの全合成の完結を目指す予定である。
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