研究概要 |
1.私達は,硫酸化チロシン含有ペプチドの新規合成法として,"safety-catch"型保護基を活用する方法論を開拓してきた。この合成法について,これまでの研究経緯をまとめて総説として発表した。 2.1.の合成方法論を大分子型の硫酸化ペプチドホルモンに適用するため,"safety-catch"型保護基で保護された保護区分ペプチドをFmoc型固相法で汎用されるWang樹脂を用いて固相合成する方法を開発した。本法により得られる保護区分ペプチドを用いて,固相区分縮合によりマガイニン関連抗菌ペプチドの合成を行った。 3."safety-catch"型保護基を活用して固相合成した保護フラグメントを用いる固相区分縮合により,ビッグガストリンに相当する34-ペプチドを効率よく構築できることを確認した。この保護ペプチド樹脂をハード酸処理することにより,高純度のヒト・ビッグガストリン-I(非硫酸化体)を得ることができた。また,同じ保護ペプチド樹脂から,ビッグガストリン-II(硫酸化体)への鍵中間体であるMsib/Msz基で部分的に保護されたペプチドを得,この鍵中間体からのガストリン-II(硫酸化体)への誘導を検討した。 4.酸に極めて鋭敏な固相担体を用いて,Fmoc-Tyr(SO_3Na)を直接ペプチド鎖に導入するアプローチを検討した。2-クロルトリチル樹脂を用いた場合,2段階の酸処理により硫酸エステルを殆ど損なうことなく,好収率で硫酸化ペプチドを得た。この方法は,"硫酸化ペプチドの効率的固相合成法"として今後に展開できる。 5.私達の合成してきた硫酸化ペプチドについてマススペクトルの測定を行ない,(i)constant neutral-loss scanningの手法により,ペプチド混合物から硫酸化ペプチドを選択的に検出できること,(ii)複数個の硫酸化チロシンを含むペプチドの特徴的なフラグメンテーション,を明らかにした。
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