研究概要 |
Silylation-benzylamination[H.Vorbruggen et al.,Liebigs Ann.Chem.,745(1976)]を利用して、イノジンから容易に誘導できるN^6-ベンジルアデノシン類の水溶液中での一電子酸化反応を詳細に検討することにより、脱ベンジル化のための酸化条件と最適なベンゼン環上の置換基を合理的に設定し、イノシンからアデノシンへの簡便な変換法を確立すると共に、その方法を[6-^<15>N及び1-^<15>N]-標識アデノシン合成に適用し、当初の目的を達成した。さらに、本変換法を2'-デオキシプリンヌクレオシド類に適用し、2'-デオキシイノシンを原料とする[6-^<15>N及び1-^<15>N]-標識2'-デオキシアデノシンの簡便合成法を確立した。[6-^<15>N]-標識Adenosine類の合成法は既にいくつか報告{cf.S.R.Sarfati et al.,Tetrahedron,44,6367(1988)and J.Labelled Compds.Biopharm.,29,1323(1991)}があるが、本法は、これら従来法に比べて、糖部の保護を必要とせず、操作の簡便さ、短工程、総収率の面で極めて優れている。本研究で得られた知見は、核酸の高次構造解析において重要な情報を提供してくれる[1-or 6-^<15>N]-標識Adenosine類の容易なる入手への道を開くものであり、核酸化学や分子生物学の発展に貢献すること極めて大である。 上記変換法は、原理的にピリミジンヌクレオシド類にも適用可能と考えられたので、その可能性を追求し、ウリジンからシチジンへの変換に成功した。
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