研究概要 |
ヘンオキサゾール類は,1991年比嘉らにより沖縄県宮古島近海より採取された海綿の一種,Polyfibrospongiasp.より単離された生理活性物質である。その構造は,ビスオキサゾール核を中心に、左側にはテトラヒドロピラン部分,右側にはトリエン部分の3つの部分より成っている。ヘンオキサゾールAは,herpes simplex(単純庖疹)virus typeIに対し活性、細胞毒性が認められている。以上のように,ヘンオキサゾール類は生理活性的にも構造的にも非常に興味深い化合物である。 ヘンオキサゾールは,テトラヒドロピラン部分,オキサゾール部分,トリエン部分に分けられるので,まず、テトラヒドロピラン部分とトリエン部分を合成し最後にオキサゾール環を構築するというルートで合成を進めた。 トリエン部分の合成は市販の(R)‐3‐ヒドロキシ‐2‐メチルプロピオン酸メチルから出発し、アリルブロム体を合成し、これをパラジウムを触媒としてビニルスズ体とクロスカップリングすることにより達成した。 テトラヒドロピラン部分の合成は(S)‐1,2,4‐ブタントリオールから出発した。まず1,2‐ジオール部分の選択的保護体へ誘導し、次に末端水酸基をParikh‐Doering法により酸化してアルデヒドとした後、不斉アリル化反応を用いてanti‐1,3‐ジオール体のみを選択的に得た。次に,二級水酸基をTBS基で保護し,末端オレフィンをWacker酸化したところ,目的とするメチルケトン体を得た。 現在、上のメチルケトン体からテトラヒドロピラン部分の合成を検討中である。
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