含窒素六員環構造は多くの生理活性物質に含まれる共通構造である。この様な環構造の合成に最も直接的なアプローチは1-アザジエンとオレフィン類とのDiels-Alder反応と考えられる。ところが従来1-アザジエンそのものとジエノフィルとのDiels-Alder反応は困難なものとされていた。この理由の一つとして1-アザジエン自身がイミン部分の加水分解等により比較的不安定であることが挙げられていた。本年度は、加水分解等により不安定であったイミン部分を芳香環に組み込んだ安定な1-アザジエンとして2-ビニルアゾール誘導体(1)のDiels-Alder反応を検討した。その結果、以下の成果を得た。 (1)1は電子求引性、電子供与性のオレフィン何れも反応し、対応する環化付加体を位置選択的に与えることを明らかにした。(2)この反応は分子内の系にも極めて有効であることも明らかにした。すなわち、ジエン系の4位に種々のp-置換フェニル基を有する2-ビニルアゾール(1)を用いて3種の電子的に異なるジエノフィル(2-4)との反応を検討した結果、この反応は対応する付加体(5)を位置選択的に与えることが分かった。特にp-ニトロフェニル基を有する1は高い反応活性を持つという知見が得られた。また、2や3との反応はendo選択的に進行することも明らかにした。さらに、この反応は分子内の系に極めて有効であることも明らかにした。すなわち、6a-dを加熱すると分子内のジエノフィル末端の置換基(R)がendoで付加した生成物(7)を立体選択的に与えることを見いだした。これらの反応はベンズチアゾール誘導体ばかりでなくベンズオキサゾール誘導体(X=O)でも同様に進行する。
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