研究概要 |
1.ビニル基末端にフェニルチオ基を持つエナミドのラジカル環化反応:2-Bromo-N-[(4-methoxyphenyl)methyl]-N-[2,2-bis(phenylthio)ethenyl]butamide(1)を還流トルエン中azobis(isobutyronitrile)(AIBN)存在下Bu_3SnHで処理すると、(3R^*,4S^*)-3-ethyl-4-[bis(phenylthio)methyl]-1-[(4-methoxyphenyl)methyl]-2-azetid inone(2)が58%の収率で得られた。この反応の特徴は3,4-trans体が選択的に得られる点である。この化合物はさらに化学変換することによって(±)-PS-5の合成中間体に導き、形式合成を達成した。 2.1,2-不斉誘起反応:化合物(1)のエチル側鎖にキラル中心を導入し、その1,2-不斉誘起反応を検討した。即ち、(2S,3R)-2-acetoxy-2-bromo誘導体(3)をBu_3SnHで同様にで処理すると、(3S,4S)-と(3R,4R)-の立体配置をもつβ-ラクタムが全収率60%、約2:1の比で得られた。この主成績体の酸素官能基を反転後、化学変換によって(+)-thienamycinの重要合成中間体に導き、その形式合成を達成した。 3.1,3-不斉誘起反応:化合物(1)の窒素原子上にキラル補助基を導入し、その1,3-不斉誘起反応を検討した。即ち、1-[(S)-1-phenethyl]誘導体(4)を同様に処理すると、(4S)-と(4R)-の立体配置をもつβ-ラクタムが全収率70%、約3.4:1の比で得られた。この主成績体を化学変換することにより、(+)-PS-5の重要合成中間体へと導き、その形式合成を達成した。化合物(3)と(4)を組み合わせれば、さらに高い選択性で(4S)-2-アゼチジノンが得られるものと考えられる。実際、収率は29%に低下するものの7.5:1の比に向上した。 以上、従来ラジカル環化反応では困難とされていた、(1)4員環化合物の合成に成功し、(2)立体制御にもかなりの成果を得た。
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