研究概要 |
Eudistoma属のホヤから単離されたA環上にBr,OH基などの置換基を持つユーディストミン類1は強い抗ウイルス活性を示すカルボリンアルカロイドである。最近、ユーディストミンの構造-活性相関の研究からA環へのMeO基の導入は抗ウイルス活性ならびに抗腫瘍活性を著しく増強することが報告されている。我々は昨年度までにインドール環上に置換基を持たない12-カルバユーディストミン2の合成とその抗ウイルス活性について検討し、インフルエンザウイルス-B型に対し究めて特異的に増殖抑制作用を示すことを明らかにしてきた。そこでより優れた抗ウイルス活性化合物の探索を目的にしてA環上への置換基の導入を検討し、次のことを明らかにした。i)市販の5-メトキシインドールから得られる5-メトキシトリプタミンを先に我々が開発した方法を適応し、アゼチジン体3に導いた。3をマイゼンハイマー転位によりオキサゼピン4に導いた後、異性化、二重結合の飽和、クルチウス転位などの反応を用いて5-メトキシ-12-カルバユーディストミン5の合成ルートを確立した。ii)5の抗ウイルス活性を検討したところ、HSV-1に対して究めて強い増殖抑制作用(MIC0.084μg/ml)を示した。しかしながら、化合物5は細胞毒性も示した。今後、細胞毒性の軽減を目的としインドール環上の置換基の変換について検討し、構造-活性相関をより明らかにする予定である。iii)対照薬として、5-デブロモユーディストミン-K6を合成し、抗ウイルス活性の評価体制を確立した。
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