研究概要 |
1.先に開発した化学発光検出高速液体クロマトグラフ(HPLC)によるニトロアレーン(ニトロ多環芳香族炭化水素,NPAH)分析システムと蛍光検出HPLCによる多環芳香族炭化水素(PAH)分析システムを接続して,発癌関連4種NPAH(1,3‐ジニトロピレン,1,6‐ジニトロピレン,1,8‐ジニトロピレン,1‐ニトロピレン)及び8種PAH(フルオランテン,ピレン,ベンツ[a]アントラセン,クリセン,ベンゾ[b]フルオランテン,ベンゾ[k]フルオランテン,ベンゾ[a]ピレン,コロネン)の同時分析法を開発した。更に分離・検出条件を改良することにより,発癌関連物質である2‐ニトロピレン,4‐ニトロピレン,2‐ニトロフルオランテン,3‐ニトロフルオランテン及び8‐ニトロフルオランテンも分析可能とした。 2.大気粉じん中から1,3‐,1,6‐,1,8‐ジニトロピレン及び1‐ニトロピレンに加えて,新たに2‐ニトロピレン,4‐ニトロピレン,2‐ニトロフルオランテン,3‐ニトロフルオランテン及び8‐ニトロフルオランテンが検出された。更に,都心と郊外の大気内組成の比較より,これらの大気内二次生成・輸送が示唆された。 3.都市大気中の1,3‐,1,6‐,1,8‐ジニトロピレン及び1‐ニトロピレン濃度の日内変動を詳細に追跡した結果,自動車(発生源)以外の変動要因として,逆転層(冬季)や太陽光(夏季),風(年間)などが推定された。また,降水雪中からもこれらのニトロアレーンが検出された。 4.都市大気粉じん中の1,3‐,1,6‐,1,8‐ジニトロピレン及び1‐ニトロピレンのいずれについても,65%以上が呼吸により肺胞まで進入し易いといわれる粒子径1.1μm以下の微粒子分画(全粉じん重量の39%)に存在していた。これらのニトロアレーンの分布はS.Typhimurium TA98株やYG1024株を用いた直接変異原性の分布と強い相関があった。
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