高度好塩菌の光感覚受容体は光信号のトランスデューサー蛋白質を介して情報を伝達する。共通にみられる特徴はこの2者の遺伝子が必ず隣り合ってコードされていることである。バクテリアのトランスデューサー蛋白質はすべて非常に相同性の高い領域をもっていることを利用し、両者を橋渡しする領域をターゲットとするPCRを行い、これまで成功していなかったH.salinariumのフォボロドプシン遺伝子のクローニングに成功した。塩基配列も決定したが、他の方法でクローニングに成功したHawai大学のグループにわずかに遅れをとった。我々の方法の有効性を証明するため、現在、他の好塩性の古細菌の光感覚受容体をクローニングしようとしている。 H.salinariumのフォボロドプシンは古細菌のロドプシン類のなかでも短波長に極大吸収を示す点でユニークである。この性質を発色団の6-7単結合のcis型コンフォーメーションに帰する考えかたも従来あったが、今回、他の古細菌ロドプシン類と同じ6-s-transであることを証明できた。6-s-ciに固定した発色団アナログはフォボロドプシンに結合はするものの、nativeなフォボロドプシンに特徴的な振動構造をみせなかった。6-s-transに固定したアナログはnativeな発色団より速く結合し、nativeなフォボロドプシンに特徴的な振動構造をみせた。 フォボロドプシンに13位のメチル基を取り除いた発色団アナログを導入することで、ステップダウンの光驚動性を誘導することができた。すなわちこのアナログは光驚動性の符号を反転させた。フォボロドプシンの機能発現の仕組みを解き明かす鍵とも思える新たな知見である。 単細胞緑藻クラミドモナスの走光性に光合成が大きく影響していることがわかり、クリプトモナス、クロオモナスの走光性作用スペクトルはクラミドモナスのものに良く似ていることがわかった。
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