1.申請者らはかねてより非反応性プラズマ照射によって種々の合成高分子粉末試料に生成する表面ラジカルをそのESRスペクトル測定とシミュレーションによって明らかにしてきた。本研究においては、同様の方法によって未検討であった合成高分子に加えて、医薬品助剤として有用と考えられる糖類(単糖類、多糖類)に種々の条件下でアルゴンプラズマ照射し、生成する表面ラジカル構造と生成特性を明らかにした。 2.プラズマ照射高分子に生成する固体表面ラジカルの完全無酸素状態でのメカノケミカル再結合反応は、ポリエチレン等の主鎖型ラジカルのみならず、ポリメチルメタクリレートなどの主鎖切断型ラジカルにおいても進行したが、さらに、種々の糖類の固体表面ラジカルにおいても首尾よく進行することが示された。この様に、メカノケミカル的な固相ラジカルの再結合反応は、ポリアクリルアミドやポリアクリル酸などのように高分子間相互作用がとくに大きい高分子を除き、一般性ある反応であることを明らかにした。 3.このような固体表面ラジカルのメカノケミカル再結合反応に基づいた、テオフイリン(モデル薬物)とプラズマ照射高分子粉末とを混合粉砕することによる薬物溶出制御は、ポリメチルメタクリレートなどの主鎖切断型ラジカルをもつ高分子においては、有意な効果を示さなかったが、ポリエチレンなどの主鎖型ラジカルをもつ高分子においては、いずれもその効果を示し、プラズマ照射条件やメカノケミカル反応条件の設定によって、合目的の様々なモノリティック型DDS製造の可能性が強く示唆された。
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