研究概要 |
放出機構の解明のため、肝実質細胞への取り込みに及ぼす分子量の影響を調べ、ついでクッパー細胞への取り込み挙動を詳細に検討した。 1)低分子分画ヘパリン(LMWFH:7,000Da)のラット初代培養肝実質細胞における取り込みを検討し、これまでに得られている高分子分画ヘパリン(HMWFH:20,000Da)における結果と比較した。60分にわたるLMWFHの長時間取り込み(extended uptake)の最大取り込み速度(Vmax)とミカエリス定数(Km)は、それぞれ0.34pmol/min/mgと116nMとなり、VmaxがHMWFHのそれ(0.36pmol/min/mg)と同程度であるのに対し、KmはHMWFHのそれ(21nM)の5倍以上大きい大きい値を示していた。従って、ヘパリンの分子量の低下に伴う肝実質細胞への取り込みの低下は、主としてヘパリン分子量の低下に基づくヘパリン分子と肝実質細胞との親和性の低下によっていることが明らかになった。取り込み阻害剤に対する挙動はLMWEFとHMWFHの間に大きな相違は見られなかった。 2)高分子分画ヘパリン(HMWFH:20,000Da)のラット遊離クッパー細胞への取り込みに及ぼす温度及び各種輸送阻害剤の影響を検討した。取り込みの濃度依存性、取り込み培地の温度を37℃から4℃に低下させることによるヘパリンの細胞内への内在化量の低下、及び有機アニオンや数種のスカベンジャー・リセプター・リガンドやヘパリン類によるクッパー細胞への結合の阻害が認められたことから、フェニラルシンオキサイドによる阻害が認められなかったことから、多くのポリペブタイドに対して奉公されているリセプター介在性のエンドサイトシスとは異なるものであると推測された。 今後、放出の機構解明のためには、さらにヘパリンの肝実質細胞とクッパー細胞の表面への結合量と真の内在化量とを分離評価する方法の確立を詳細に行う必要があると考えられる。
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