研究概要 |
1.超音波照射実験法を確立するために、麻酔法、採血法、除毛法、ゲルの適用量など実験動物(ラット)を用いた実験条件を検討し、実験法を確立することができた。この際、皮膚温度の上昇(火傷)を抑えて照射効果を最大にするには、超音波ヘッドの皮膚への適用に十分注意して(皮膚温度をモニターしながら)実験することが必要なことがわかった。また、本超音波発生装置の治療ヘッドには大(直径3cm)と小(直径1.5cm)の2種類があり、実験動物の体表面積を考慮すると小ヘッドの法が望ましいことがわかった。 2.インドタシン(モデル薬物)ゲル軟膏からの経皮吸収に対するパルス超音波の影響を、パルス比1:2および1:4で検討した。照射時間を10分とし、照射強度を0.25W、0.5Wと変えて連続波を照射すると、いずれの場合も超音波を照射しないコントロールに比べ照射した時の血中濃度は増加し、直径3cmのヘッドを用いた先の結果と一致した。パルス比1:2のパルス波を照射強度を変えて照射した場合、0.5wおよび1wでは血中濃度が増加したが、1.5wに照射強度を大きくすると促進効果がなくなることから、至適照射強度の存在が示唆された。パルス比が1:4の場合、照射強度が1W、1.5W,2Wではコントロールと同じ血中薬物濃度だったが、2.5wでは吸収促進効果がみられた。連続波およびパルス波の影響と吸収促進効果との関係を知るために、総エネルギー量が一定になる様な組み合わせについて、経皮吸収に対する超音波の効果を比較した。その結果、総エネルギー量が等しくても超音波の効果は異なり、パルス比1:4のパルス波の時に超音波の効果がもっとも大きいことがわかった。 3.薬物の経皮吸収を超音波により改善する試みを行い、通常の超音波治療に用いられる程度のパワー(0.5W、10分連続照射)で、ゲル軟膏からのモデル薬物の経皮吸収を促進できることが可能となり、超音波による経皮吸収促進法は簡便かつ安全な方法となることを確認した。また、パルス比可変の発生装置を用いてパルス照射条件(照射強度、照射時間)と吸収性との関係を検討し、パルス照射により皮膚温度の上昇を抑えて(皮膚損傷を起こすことなく)さらに効果的に経皮吸収を促進できることが示唆された。
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