本年度は、まず遺伝子組換えによって得たRNase Rh(RNase RNAP-Rhと呼ぶ)の結晶構造の精密化を行った。高エネルギー物理学研究所で収集した回析データを用いて、結合距離・結合角等に束縛をかけた最小2乗法による精密化を行い、分解能は1.65Åで、最終R値は0.187となり、かなり良好な精密化を行うことが出来た。野生型のRNase Rhの構造と比較すると主鎖のN末端3残基以外のfoldingは両者でよく一致していることが分かった。次に、RNase RNAP-Rh(Native)結晶に、阻害剤である2'-AMPを浸漬法により導入し、その結晶に対して回析データを収集することができた。Nativeとの間の差フーリエ合成を行なう事により、阻害剤2'-AMPの塩基部分は、活性部位と予測されていた位置付近に存在するTrp49の側鎖環、比較的分子表面にあるTyr57の側鎖環の間にサンドイッチされて認識されていることが分かった。このような基質の認識機構は、従来の化学修飾等の研究においては全く予測できなかったことであった。触媒反応に関与すると思われていた残基(His109、His46、Glu105)の近くにヌクレオチドのリン酸基は位置していることも判明した。ついで、本ファミリーの酵素が塩基非特異的である起源を明らかにすることを目指して、アデニン以外の塩基を持つヌクレオチドとの複合体結晶の調製を試みた。その結果、2'-GMPとの複合体結晶を得ることができ、予備的な解析に成功、現在高分解能での精密な構造の確定に向けて精密化を行っているところである。グアニン塩基の結合サイトはアデニンの場合と大きな違いはないが、水素結合の様式等若干の相違点が見られている。
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