研究概要 |
アセトアミノフェン、ナプロキセンそして新たにエタクリン酸も加えて、ラット遊離肝細胞系にて薬物による酸化的ストレスについて検討を行った。(1)アセトアミノフェンについて:アセトアミノフェン(1mM、10mM)をラット遊離肝細胞と37℃でインキュベーションすると、1mMアセトアミノフェンの場合に極微弱化学発光が観察された。このことは、アセトアミノフェンによる脂質過酸化を強く指示するものである。一方、10mMアセトアミノフェンでは化学発光は顕著に抑制されていた。このことは、すでに報告しているアセトアミノフェン自身が持つ抗酸化作用によるものと考えられる。(2)ナプロキセンについて:10mMナプロキセン存在下でラット遊離肝細胞を37℃でincubationすると、TBARSが経時的に生成した。TBARS生成に対するナプロキセン濃度依存性を調べると、5mM以上の濃度で有意なTBARSの生成が認められた。また極微弱化学発光も観測された。細胞内還元型グルタチオン(GSH)の低下とTBARSの生成との間には負の相関が認められた。一方、肝細胞内酸化型グルタチオン(GSSG)と全グルタチオンの濃度比は増大した。これらの事実はラット遊離肝細胞においてナプロキセンによる酸化的ストレスが発生していることを示している。(3)エタクリン酸について:2mMエタクリン酸存在下でラット遊離肝細胞を37℃でincubationすると、TBARSが経時的に生成した。TBARS生成に対するエタクリン酸濃度依存性を調べると、0.5mM以上の濃度で有意なTBARSの生成が認められた。シトクロームP450の阻害剤SKF-525Aを共存させると、TBARSの生成は顕著に抑制され、また抗酸化剤N,N′‐dipheny1‐p‐phenylendiamine(DPPD)の存在でTBARSの生成は顕著に抑制された。TBARSの変化に伴い、GOT漏出の抑制も認められた。
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