研究概要 |
全ドメインを有する七面鳥オボムコイド(OMTKY)およびニワトリオボムコイド(OMCHI)を固定化した充填剤の持つ優れた光学認識能に比較して、ドメインを固定化した充填剤からは期待された光学認識能は得られなかった。このことは、オボムコイドの優れた光学認識能が共存する他のタンパク質に起因している可能性を示唆している。そこで、粗オボムコイドのイオン交換クロマトグラフィーによる分画を行った。さらに、得られたタンパク質画分のキャラクタリゼーションを逆相クロマトグラフィー、マトリックス支援レーザー脱離飛行時間型質量分析計、N-末端配列分析、糖含量の定量、酵素阻害活性を用いて行った。その結果、分子量約30,000の新規糖タンパク質が粗オボムコイド中に約10%含まれていることを発見した。このタンパク質はオボグリコプロテインと命名された。さらに、このオボグリコプロテインと精製したオボムコイドとをそれぞれ別個に固定化した充填剤を合成し、分離能を検討した結果、オボグリコプロテインは優れた光学認識能を示したのに対して、オボムコイドは光学認識能を示さなかった。これらの結果から、従来報告されていたオボムコイドの光学認識能はオボグリコプロテインによるものであることが明かとなった。今後、オボグリコプロテインの一次構造、糖鎖構造の決定、オボグリコプロテインによる光学認識サイトおよび光学認識機構を検討する予定である。 一方、全ドメインを有するオボムコイドでは、リガンドが結合サイトに到達できないために光学分割が達成されないのに対して、コネクションペプチドを切断したオボムコイドドメインでは容易に結合サイトと相互作用できるために光学分割が達成されると推定した。
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