研究概要 |
七面鳥オボムコイド(OMTKY)およびニワトリオボムコイド(OMCHI)より、ファーストドメイン、セカンドドメイン、糖鎖フリーサードドメイン(OMTKY3およびOMCHI3)および糖鎖含有サードドメイン(OMTKY3SおよびOMCHI3S)を単離した。その結果、糖鎖フリーサードドメインおよび糖鎖含有サードドメインにおいて光学認識能を見いだすことができた。そこで、OMTKY3およびOMCHI3表面上での2-アリルプロピオン酸誘導体の光学認識機構をNMRおよび計算化学的手法を用いて詳細に検討した。その結果、2-アリルプロピオン酸誘導体であるU-80,413のR体はOMTKY3およびOMCHI3上のArg21、Lys34、Phe53およびLeu23とのイオン的相互作用、水素結合、疎水性相互作用し、S体は異なるオリエンテーションをとるためイオン的相互作用、水素結合は可能であるが、疎水性相互作用ができないことが分かった。その結果、U80,413の光学認識が起こると推定した。また、上記サイト以外に、Va141、Va142およびLeu48からなる非特異的結合サイトの存在も明らかとなった。 しかしながら、ドメインを固定化した充填剤からは期待された光学認識能は得られなかったことから、オボムコイドの優れた光学認識能が共存する他のタンパク質に起因している可能性に着目した。そこで、粗オボムコイドをクロマトグラフィーにより分画し、新規糖タンパク質が粗オボムコイド中に約10%含まれていることを発見し、このタンパク質をオボグリコプロテインと命名した。さらに、それぞれのタンパク質を固定化した充填剤を合成し、分離能を検討した結果、オボグリコプロテインは優れた光学認識能を示したのに対して、精製したオボムコイドは光学認識能を示さなかった。これらの結果から、従来報告されていたオボムコイドの光学認識能はオボグリコプロテインによるものであることが明らかとなった。
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