研究概要 |
生体中には、プロスタグランジンやトロンボキサン(カルボン酸)などのように、極微量で存在し、極めて強い生理活性を有する生体関連物質が多く含まれている。しかし、高感度な分析法が無いためにそれら化合物の生理的役割に関する詳細は不明な点が多い。したがって、この分析法の開発は生化学、薬理学、臨床化学などの分野で切望されている。この開発を行うために、超高感度測定法になりうる方法論として期待されている、レーザー励起蛍光検出用の誘導体化試薬の開発を行った。 カルボン酸類の高感度かつ高選択的な、通常蛍光及びレーザー励起[ヘリウム-カドミウム(He-Cd)光源]蛍光高速液体クロマトグラフィー用誘導体化試薬として、4-(1メチルフェナンスロ[9,10-d]イミダゾール-2-イル)ベンゾヒドラジド(MPBI)を開発した。C16-C20直鎖飽和脂肪酸を用いて至適反応条件を調べた。誘導体化反応は、ピリジン及び1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドの存在で、緩和な温度で進行した。生じた蛍光性誘導体(カルバモイル化合物)は、水-メタノールを移動相に用いる逆相分配(カラム:C18)クロマトグラフィーにより分離後、通常及びレーザー励起蛍光検出器で測定された。前者の検出器(励起波長325nm、発光波長460nm)を用いたとき、検出限度(S/N=3)は2-12fmol/10μlであった。励起波長がHe-Cd光源の発光波長とほぼ一致することから、このレーザーを光源とする検出器により測定された。これによる検出限度(S/N=3)は、70-100amolであった。 反応条件を変えることにより、MPBIはカルボニル基に特異的なレーザー励起蛍光用試薬としても利用できることが分かった。本法は、希塩酸中、MPBIがカルボニル基と反応し、ヒドラジドを形成することに基づいている。本反応により、数十〜数百amolレベルのカルボニル化合物の検出が可能となった。 本試薬は生体関連物質の分析に極めて有効であると考える。
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