1.fMLP感受性PI3キナーゼの分離 細胞増殖因子刺激の際には、抗ホスホチロシン抗体や抗p85(既知のPI3キナーゼの制御サブユニット)抗体による免疫沈降画分中のPI3キナーゼ活性が上昇することが知られている。平成6年度の研究において、好中球をfMLP刺激した場合には同様の現象は観察されず、各種阻害薬の作用からも既知のものとは異なる活性化機構が存在するものと考えられた。そこで、好中球の細胞質画分を陰イオン交換カラムで粗分画したところ、従来の報告とは異なり、複数のPI3キナーゼ活性が存在することが明らかになった。この中には、fMLP受容体と機能的に会合していることが知られるGTP結合タンパク質のβγサブユニットによって活性化されるものが含まれていた。この成果に基づき、平成7年度も引き続きこの活性の精製を進めたい。この際、現段階では、βγサブユニットによる本活性の制御に介在因子が必要である可能性も否定できないので、この点にも配慮したい。また、好中球という材料は、多量精製には必ずしも適当ではない。同等の酵素を発現している臓器を探索する一方、βγサブユニットやwortmanninを結合させたアフィニティカラムを作成し、精製効率を改善することに着手している。 2.PI3キナーゼによって動態が調節される細胞内機能因子の探索 平成6年度は、活性酸素産生に関与するいくつかの因子に対するポリクローナル抗体の作成などを行い、現在までに、p47phoxと呼ばれるタンパク質の走化性因子刺激に応答したリン酸化がwortmanninによって抑制されることを観察している。好中球が活性化される際には、このタンパク質の細胞膜への移行が必須であることが知られているので、wortmanninの作用を検討したい。また、p47phoxのリン酸化の抑制が、PI3キナーゼの阻害の結果であることを確認するために、現在作成中のいくつかのwortmannin誘導体を用いて、既知およびβγ感受性PI3キナーゼに対する阻害効果とこのリン酸化に対する阻害作用とを比較、検討する。
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