乳酸菌と腸管との特異的な相互作用を分子レベルで明らかにするため、糖結合性蛋白質であるレクチンに着目し、この発現の違いによって腸管内でのすみわけを説明できないか否かを検討することを目的とし、このレクチンの精製、構造解析を試みた。 ビフィズス菌Ba56株、4010株の菌体よりムラミニダーゼ、リゾチーム処理後、超音波処理により菌体膜画分を調整した。この膜画分を可溶化し、ラクトース、マルトース、フコース、ジ-N-アセチルキトビオースを固定化したアフィニティーカラムにかけ精製したところ、ラクトースに特異的に結合する分子量42kDaの蛋白質の存在が明らかになった。この蛋白質は、腸管での保持率の高い4010株では特に多く存在しており、菌体の腸管での保持にこのレクチン様蛋白質が関与していることが示唆された。この蛋白質をラクトースを固定化したアフィニティークロマトグラフィーを用いて大量に精製すると共に、リジルエンドプロテイナーゼで消化し逆相HPLCでペプチドフラグメントを単離し、部分アミノ酸配列を決定した。またこの蛋白質は、腸管粘膜上皮のムチンMUC1と特異的に結合すること、ミルクムチンのMUC2とは結合しないこと、も免疫沈降後SDS電気泳動を行い確認した。また、アミノ酸配列に基づく塩基配列をもとに、遺伝子クローニングを行なうため、遺伝子ライブラリーの作製も行った。
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