研究概要 |
1.Bifidobacteriumの培養細胞株への接着性 成人型に属するB.adolescentis Ba56を蛍光色素であるPKH26にて標識後、固定した培養細胞(ヒト膵臓癌細胞株Capan-1と、ヒト大腸癌細胞株HT-29、LS174Tの3種)に対する接着性を観察した。3種の細胞間で比較したところ、LS174T細胞への親和性が最も高く、解離定数はLS174T細胞ではHT-29細胞の1/2であることが分かった。この接着における糖鎖の関与を検討するために、LS174T細胞との接着について、単糖および二糖による阻害実験を行った。その結果、ラクトース、ガラクトース、グルコース、は接着を阻害することが分かった。 2.Gal-Sepharose4Bに対する吸着画分の培養細胞株への結合性 Ba56の細胞壁画分より2Mグアニジン塩酸にて抽出した表層蛋白質画分を^<125>I-標識し、Gal-Sepharose4Bを用いてアフィニティクロマトグラフィーを行った。得られた画分を2ME還元下SDS-PAGEを行ったところ、ガラクトースと、ラクトースにて溶出された吸着画分には、分子量44,000、30,000の蛋白質が含まれていた。これを粗精製レクチン画分とし、細胞に対する結合性を検討すると、菌体で行った場合と同様に、HT-29細胞よりLS174T細胞に対する親和性が高いことが分かった。 3.Ba56表層蛋白質画分のムチンへの結合性 リガンド分子の同定を目的とし、各種ムチン(ヒト大腸正常組織由来の硫酸化ムチン画分、LS174Tより放出されるムチン画分、ヒト乳脂肪膜画分、ヒト初乳脂肪膜画分)をSDS-PAGEし膜にブロットしたものを、Ba56表層蛋白質や得られた粗精製レクチン画分にて染色した。また、LS174T細胞に高い結合性を有する抗硫酸化ムチンモノクローナル抗体91.9Hを用い、この抗体結合性のムチンにBa56表層蛋白質が結合するかを免疫沈降法にて検討した。Ba56表層蛋白質とヒト大腸正常組織由来の硫酸化ムチン画分を混和したものを、モノクローナル抗体91.9Hを用い、Protein A-Sepharoseにて共役沈降させた。
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